UCHINA SHOWMAN  -笑う島-  FILE.1ゴリ

UCHINA SHOWMAN -笑う島- FILE.1ゴリ

FILE.1 ゴリ(ガレッジセール)

「芸人」 というクリエイターの「個」を見つめ、沖縄の「笑い」の原点を探るインタビュー

 

文=饒波貴子

写真=仲程長治

 

「オーラたっぷりの存在感」を放つゴリ。真っ直ぐな眼差しとブレない心で、男らしさが漂う。何を「笑い」に変えるか、何をテーマに映画を撮るかなど…現場を離れても頭の中はフル回転。ホットでストイックなアイディアマンは、次はどんなことに挑戦するのだろうと、いつもワクワクさせてくれる。

 

―― 記憶に残る子どもの頃の「お笑い体験」について教えてください。

テレビに影響されました。「オレたちひょうきん族」や「8時だョ!全員集合」。子どもの頃、僕は大阪の親戚の家に預けられていたんです。友達はいないし、土地勘はないし、言葉も違う。そしておじさん、おばさんとの始めての暮らし…不安だらけでした。だから、テレビに逃げようとする気持ちがハンパなく強かったんです。

テレビをつけると「そこには楽しい世界が待ってる!」という感覚を鮮明に覚えています。観客がみんなケラケラ笑っているのを観て、「テレビの中に飛び込みたい!」という願望がすごく強くありました。その思いが、エンターテインメントに憧れたきっかけかもしれません。

僕は得意なことが何にもなかったんです。運動神経は悪い方ではなくて、器用貧乏だからある程度のことはこなせちゃう。でも、極められることはない。その中で「注目を浴びたい時におバカなことをする」ことが1つの武器でした。バカなことしたら、みんなが俺のこと見てくれる、笑ってくれる。注目してほしかったんですね。寂しがり屋だったのかもしれません。

 

―― 子どもの頃、好きだったものは?

子どもの頃も今も、自然と生き物はずっと好きです。昔は、森や池に入ってはカエルだヘビだザリガニだカメだ、という感じで何かを捕まえていました。今も自宅でジャックラッセルテリアという犬と、ギリシャリクガメを飼っていますよ。海、山、森、池… 最近はあまり行けていませんが、全部大好きです。

今年のお正月は息子と釣りに行こうと思って、船の予約を取りました。ところが前日の夜に生まれて初めて食中毒になってしまって、朝から晩までずっとトイレの中(笑)。あんなに長時間、便座を抱きしめたのは初めてで、便器と大親友になった気分でした(笑)。

そんなこんなで、久し振りに沖縄の海で遊ぶ計画がダメになって残念でしたが、東京にいる時は毎朝の犬の散歩が日課です。もし仕事と両立できるなら、やんばるの土地を買って、野菜を作りながらヤギやブタなども飼って、自給自足の暮らしをしてみたいです。でも、無理だろうな… 家庭菜園でカブを作るのさえ大変でしたから。嫁は「私、サボテン枯らす女よ」と訳わからないこと言ってます(笑)。

 

―― 映画監督・俳優としても活躍中ですが、プライベートで好きな作品といえば?

いっぱいありますよ! まず、デヴィッド・ザッカー監督の『裸の銃(ガン)を持つ男』。すっごくお金をかけてバカバカしいことをしている、ど・コメディ。くだらないけど大好きなんですよね。オススメしたい1本は、『リトル・ミス・サンシャイン』。メジャーな役者が出ていない低予算の作品ですが、ロングラン上映されてアカデミー賞でもノミネートされた素晴らしい作品です。笑っているのに、涙が出てくるんですよ。最高の出来栄えで、悲しさを押し付けない作り手の手腕を感じました。本当にいい映画なので、ぜひ観てください!

 

―― 手掛けている映画について教えてください。

今、監督10作目の作品を制作中です。4月の「沖縄国際映画祭」で上映する短編を、石垣島を舞台にして、台湾人の主役で撮りました。楽しいコメディ作品に仕上げますよ。今まで基本的にコメディを撮ってきて、若い頃は「バカバカしいものだけ撮れればいいや」っていう想いだったんですけれど、最近はヒューマン的なものを入れたくなってきて。作風が変わってきたなぁと感じています。

人間が奥底に抱えているもの…例えば、弱さとか、汚なさとか、ずるさとか。そういうものを「お笑い」というフィルターを通して表現できたらいいな、と。人と人との表面的な付き合いをあからさまに見せて、でも実は、腹の中でこんな汚いことを考えている…とか。そういう根本を「笑い」のフィルターを通して見せてみたい。押し付けるのではなくて、笑って観ている方が心に重く残るんですよね。そういうテーマで、人間的な面を表現できたらいいなと思っています。

この年代になって、僕自身に感じ取る力がついてきたかもしれません。若い時は、他人のことや人間について考えるより、自分を見てほしいという欲の方が強かったんですよね。自分が光を出す立場ではなくて、相手が出す光をどうやったら上手に吸収できるか? 周りを照らすことができるか? ようやく分かってきました。

やっと「レフ板」になれた感じかな。今までは「照明」になろうとしていたんですよね。でも、「レフ命」っていう女優さんも多い中で、「レフ板」の役割とか良さを、僕も理解できるようになりました(笑)。

 

―― クリエイターとして、これからどこへ向かって行きますか?

ガレッジセールとしての芸ごとは、舞台になっていくと思います。メディアの世界は変化がありますから、本当に自分たちが表現したいことは、どうしても舞台上になってくるでしょうね。沖縄では「おきなわ新喜劇」という舞台がありますから、それを広めるためにテレビでも流していただいて、お客様に劇場に足を運んでいただく活動もしていきます。

個人的には映像表現かな。やっぱり、映画ですね。

 

―― 個人活動は、どういう気持ちでやっていますか?

自分の欲を満たす感覚です。ガレッジセールのネタは僕が書いていますけれど、川田がいるので自分勝手にはできません。川田の考えや意見がありますから、2人の血が混ざるんですよ。どうしても表現したい個人的なものは、僕個人の血を表現します。お笑いだけじゃなくて、映画でしか表現できないこともありますから、僕は「エンターテインメントが好きなんだ」と実感しますね。笑わせるだけじゃなくて、喜ばせて泣かせたい。僕が思うエンターテインメントで表現したいこと、いろいろと出てきていますよ。

 

―― 川田さんからどんな影響を受けていますか?

川田は、すごく飄々としているヤツ。僕からするとなんかね… 必死感が見えてこなくて、ズルイなって思っちゃうんですよ。飄々と、ボケーっとしながら変なことやって、自然にみんなを笑わせている、みたいな。感覚で生きているから、川田は大喜利に強いです。僕は全然ダメで、川田の方が爆笑とりますよ。

1度、川田にネタ書いてってお願いしたら、「ジャングル」というタイトルで「隊長! 隊長! タイヘンです」っていう1行だけを僕に渡してきました。「後はよろしく」って…やっぱり、ネタは全部自分が書こうと思いますよね(笑)。

でも、僕には無い部分を持っている直感型芸人タイプの川田が、うらやましいですよ。僕はネタを練って練って考える、どちらかと言えば喜劇役者派。努力して生み出すタイプですね。根が真面目で、実はネクラなのが僕。1人でいることが好きだし、人がいると気を遣ったりするんです。

 

―― ゴリさんが川田さんに与えている影響は?

わかんないです、川田に聞いてみないと。恥ずかしがり屋だから普段は絶対言いません。僕もこっ恥ずかしいから聞かなくてもいいかも。急にディスられてもイヤですしね(笑)。

 

―― ゴリさんにとってガレッジセールとは?

勇気を出して人生を変えた「塊」だと僕は思っています。小さな沖縄に住んでいたら、芸能界で生きていけるなんて思わないじゃないですか。僕たちの時代には沖縄出身の芸能人はあまりいませんでしたし、テレビの世界に入れるなんて… はなから思っていなかったですね。

でも1回しかない人生、興味あるエンターテインメント界に入ってみたいと覚悟を決めたんです。だけど怖くて1人じゃ入れない。飛び込めたのは、川田と2人だからこそです。勇気を出して飛び込んだら、人生が変わった。今、エンターテインメントの世界で、家族を養って生活しています。道を歩いているだけで握手を求められて「応援してるよ、ありがとう」って言われます。過去に戻れるなら、勇気を出して人生を変えた自分に「ありがとう」って感謝したい。一緒にやってきてくれた川田にも、改めて感謝したい気持ちになります。この年齢になるとね。

 

―― 最後に、ゴリさんにとって「お笑い」とは何ですか?

存在意義かな。自分って何のために存在してるんだろう、存在していいのかなって不安になる時、ありませんか? 俺って必要とされてる人間なのかなって、一度は考えることがあると思うんですよね。そういう部分で、自分がお笑いを頑張ると沖縄の人が喜んでくれて。沖縄からお笑いコンビが初めて出てきたって言ってもらえた時は、他の芸人さんとは違うものを感じました。

僕たちには沖縄という背景があり、県民の応援や期待があったからこそ前に進めたんですよ。「俺って存在していいんだ、お笑いやっていいんだ」ってホッと安心できるのは、そのおかげかもしれません。だからお笑いやるなと言われたら、何をしていけばいいんだろうって不安になるでしょうね。

ガレッジセールも結成から20年が過ぎて、ありがたいことに、人生の約半分は芸人として生きてきました。川田とは余裕で人生の半分以上、一緒にいますよ。ひとつのことを「20年続けなきゃ」って思ったら、気持ちが折れて多分ダメになったと思います。でも、僕は目の前のドアに一歩一歩近付いて、ドアノブをつかんで開けてみた。するとまたドアがあって、つかんで開けると少し前進する。それを繰り返してきたから20年以上やれたんだと思います。「20年後のドアが向こうにありますよ」って最初に言われたらとしたら、開ける気にはならなかったかもしれません。

2017.1.8 収録

ゴリが座長を務める「おきなわ新喜劇」は、よしもと沖縄花月にて毎週日曜日(変則あり)に上演中。プロデューサーとして、演者として、「沖縄の笑い」を真摯に追い求めるクリエイターとしての今のゴリ、生のゴリに出会えます。

www.yoshimoto.co.jp/okinawakagetsu/pc/

取材協力=よしもと沖縄花月