UCHINA SHOWMAN -笑う島- FILE.2 真栄田 賢

UCHINA SHOWMAN -笑う島- FILE.2 真栄田 賢

FILE.2 真栄田 賢(スリムクラブ)

「芸人」 というクリエイターの「個」を見つめ、沖縄の「笑い」の原点を探るインタビュー

文=饒波貴子

写真=仲程長治

「大胆不敵な自信家だろうな」…それが会う前の真栄田賢への勝手なイメージ。でも熱いキモチで理想を追い求める繊細な心の持ち主、と今は思う。社会風刺や沖縄あるあるを取り込んだ、漫才や舞台は爆笑モノ! 次はどんな発言が飛び出すんだろうと、ドキドキ感と笑いを与えてくれる人だ。

―― 最初のお笑い体験の記憶といえば……!?

小学校1年生の頃、「欽ちゃん」に助けられました。母ちゃんに怒られた時、テレビで萩本欽一さんの番組がやっていて、母ちゃんが思わず笑っちゃったんですよ。怒る気が失せ「もういいよ」という雰囲気になりました。

萩本さんが救ってくれたと思いましたよね。「お笑いって助けてくれる。気持ちを楽にしてくれる」って気付いたんです。でも、怒られた理由は思い出せません(笑)。

―― 真栄田さんがお笑いを意識したきっかけ、といえそうですね。

クリエイター的には、僕の中にお笑いが存在するようになったのはテレビの影響って言いたいですね(笑)!

そして実は、親父がお笑い好きだったことも大きい。結婚式の余興などで、親父が笑いを取る場面を見ていたんです。ジュディ・オングさんの真似をして、「魅せられて」を歌うんですよ。おやじは僕の公演を観に来てくれますが、「息子が活躍している」って喜びながら泣いてくれるからうれしいです(笑)。親父を見て「俺もやってみようかな」という気持ちが芽生えた気がします。

―― 気になることを舞台でポンポン発言している真栄田さんですが、最近のトピックは!?

インターネットにどっぷりつかっている、現代社会が気になりますね。ネットでの発言がデモ活動につながったり、テレビ番組に影響する現象があります。そんな大現象のきっかけが、少人数の書き込みだったりしますよね。顔を出さないネット社会の人の見えない行動を可視化する動きがあり、面白そうだと気になっています。

―― 学歴から、教師を目指していただろうと思われる真栄田さん。なぜお笑い界に!?

確かに教師を目指していました。3浪して大学に行き、「琉大プロレス同好会」に入って学園祭でコミックレスラー役をやりました。ものすごくウケたので笑わせる快感を覚え、お笑いっていいなって思うようになったんですよね。中高時代、笑いを取るのが好きだったことも思い出しました。

プロレスの試合で見ず知らずのお客さんを笑わせてすごい、もっとやってみたいと思っていたら「オリジン・コーポレーション」が芸人オーディションを開催したので、受けました。でもあくまでも目標は教師。心が揺れましたよ。

ラグビーもやっていたので、沖縄のラグビーチームを「日本一にしよう!」という目標もありましたしね。いつか…50歳位になったら、ラグビーを教えたいと思っています。結局はオリジンで芸人活動を始め、めっちゃ楽しくなっていったんですよね。お笑いにかけるエネルギーが高くなり、その道へ進んでいきました。

オリジン時代は、ライブで300人以上のお客さんから笑いを取ることがうれしかったんです。スベることももちろんあって、アイデンティティが崩壊して傷ついた日もありました(笑)。自分は面白い人間だと信じたくても、スベってしまう現実…そういうスリル満点のキツさも好きだったかもしれません。当時はピン芸人でした。

―― 東京を目指したのはその後ですか?

そうです。オリジンで一緒だったキャンxキャンが、NHKの番組に出てがんがんウケているのを見たら…負けたくない、俺だって内地で笑い取れるっていう気持ちが強くなったんです。「絶対俺の方が面白い!」ってみんなに言ってましたよ(笑)。

その内真栄田はクチだけだと言われ気まずくなって、東京に行きました。教師になると思っていた父ちゃんと母ちゃんは寂しそうでしたが、お前の人生だからと反対はしませんでした。

先に東京よしもとの養成所に行っていた後輩の内間と一緒にやれば、よしもとに入れると計算して上京しましたが、「M1グランプリ」に出るコンビになって続くとは…当時の自分たちに報告したらビックリすると思います(笑)。スリムクラブ結成前の内間は、金髪のロン毛でサングラスをかけて、革パン姿のちゃんとしていない人(笑)。誰かとコンビ組んでも、解散していたらしいです、5組位。面白くないヤツだったので、「笑い教えたろ!」って思ってましたね(笑)。

―― 内間さんはどんな人ですか?

みなさんが感じるままの…温厚で優しいゆったり内間くんです。怒っていたらたしなめてくれますし、ケンカ無しのいいコンビですよ。スポンジのように吸収してくれるので感謝しています。

お陰でカリカリしなくなり、エネルギーの流し方を学んだっていうか。でもすぐに熱くなるトコは似てますよ。2人とも勝負ごとに燃えるんです。去年M-1決勝進出が決まった時、抱き合って泣いたんですから恥ずかしい(笑)。

―― では真栄田さんが、内間さんに与えている影響は?

感覚で生きてるから頼るものがぼやけ、りきんで頑張ってる感を出せば上手く行くと思っているんですよね、アイツは。理屈がなくて結果を出せないので、物ごとを論理的に考えてはっきり分からせるようにしています。それが成功しましたよ。お笑いのからくりを教えてネタの作り方を変えたら、ライフスタイルまで大分変わっていったんです(笑)。

コミュニケーション能力が上がり、家族と良好に過ごせるようになったので、嫁さんからお礼を言われました(笑)。アイツにはいろんな事を教えていますし、教えた相手が理解してくれるのを見るのが僕は好きなんですよ。恩をきせている訳ではなく、教師向きの性格なんでしょうね。

ラグビーでも、指導した後輩が上手くできるといい顔になるのがうれしくてね。人間なんて、みんな同じ肉の塊。違いは情報が入っているかどうかだけです。僕はそういう思想で生きているんですよ。

―― おきなわ新喜劇など見ていると、沖縄の子どもたちへのメッセージなど盛り込んでいますね。

子どもが好きなので、もっと強く盛り込んでいきたいです。沖縄の人はコミュニケーション能力が低くて一方的。教育するべき親はダメ出しと、「これしなさい」という命令形が多いと思います。子どもが何を思いどう進めていくのか、つなげるシステムを持っていないんですよ。○か×しか頭になくて、子どもの気持ちや考えを聞こうとしません。

大事なのはハートなんですけどね。どうして今さびしいのか、どうしてウソをついたのかとか、考えて自分とコミュニケーションが取れるようになれば気持ちを表現できるはずです。沖縄は命令形で教育するので、今の気持ちはどう? と聞いても、表現できずに黙ってしまう子が多いです。答えるシステムを親が理解できていませんからね。

東京や大阪で子どもに接すると気持ちを伝えてきますし、それが学力の違いに出てくるんじゃないかなと思っているんですよ僕は。人の気持ちにも、自分の気持ちにも気付かない沖縄の人が多いと思います。大人になってもね(笑)。

―― 沖縄の人に伝えたいことがたくさんありそうですね。

あります! 沖縄はいいさ~、海もきれいさ~、人も優しいさ~って思われていても、良くない所もいっぱいあるぞって常に思っています。キレイごとばかり並べず、すべてを受け入れて沖縄を見た方がいいと考えます。テレビで沖縄の嫌いな所を挙げるとすぐに反発くらうんですよね。良いか悪いかではなく、好きか嫌いかは自由だと思うんですけど。

なんか不満だらけのインタビューになってきてすみません(笑)。良い悪いだけじゃなくて、考えながら自分の気持ちを大切にするなめらかな人間になってほしいですね、沖縄の人は。特に子どもたち! 親が1日5回、自分の子どもに気持ちを聞く。聞くだけでいいんです。そしたら子どもは自分の気持ちにアクセスでき、1カ月で150回くらい自分の気持ちを確認できるんです。大分変わってくると思いますし、今一番伝えたい事はそれですね。

成人式でアホなことする若者は、なんでやっているのか自分の気持ちに気付いていない。照れくさくなると怒りますし、感情が表現できないと手が出てドメスティックバイオレンスにもつながります。急に変えるのは無理だから少しずつ…「気持ちを聞く」というテーマでコントを作ったり、講演会やったり行動に移していきたいですね。文章書く連載もいいですね。文才はありますよ!

―― 真栄田さんのプライベートも知りたいです! 好きな物・好きなことは?

チーズが大好き! こげたチーズが最高! お皿でタマゴ1個割ってとろけるチーズ載せて、トースターへ。うっすらと食器のフチについたチーズがちょっと焦げて、カリカリになって最高! ごはんに合いますよ~。茶碗によそったごはんに載せてしょうゆをたらす…しょうゆタマゴ・チーズごはん! 5トン食えるくらいおいしいです(笑)。

趣味はラグビー観戦。そしてゲームにガンプラ・ラジコン作り。物を作るのが好きなんですよ。書道も絵も褒められて入賞し、昔は神童って呼ばれてました(笑)。漫画家の島袋光年は中学校の時の同級生で、よく一緒で絵を描いていて「2人の内どっちが少年ジャンプに載るか」って言われてましたよ。光年が載りましたけどね(笑)。でも私多才なので、今年はもっと売れます!

―― 好きな本はありますか?

悩んだ時に読むのが「ユダヤ人大富豪の教え」。最高です! 10年以上前、東京でフラッと本屋に入ったら光っていた本。お金の話が人生につながり、この本のお陰で僕はいろんなことを処理できました。お金に対するイメージと向き合う事を教わったんです。

実は母ちゃんが事業に失敗して自己破産し、中学生の頃怖い思いをしました。その経験からお金にビクついて遠ざかっていたんですが、過去の感情を流せば上手くいくとこの本を読んで気付きました。大きく影響されたありがたい本です。この前テレビ局でめっちゃ美人の熟女に会い、電話番号聞いて飲みに行ったんですが、この本の出版社の社長だったんです! 作者である本田健さんの話で盛り上がり、サインをいただきました。引き寄せられましたね。

―― では真栄田さんにとって、スリムクラブとは?

相方の内間はお笑いがへたくそ(笑)。人間として生きていくのも、下手くそなんですよね(笑)。

でもかわいいし、いいやつなんです。そんな内間でいいって俺は言っていて、上手くならなくていいし、へたくそを全開で出せって言ってます。スピード感がないからああいう漫才ができますし、何が言いたいのかというと…内間は内間でいいし俺も俺でいい。それを周りに伝えていけるコンビでいたいですね。

沖縄の子どもたちにも君でいい、人間みんなその人でいいよと分かってもらうための活動をしている組織ですね(笑)。俺って素晴らしいでしょう(笑)。

―― 最後に、真栄田さんにとって「お笑い」とは何ですか?

救いみたいなもんですかね。最初に戻りますが、怒ってたお袋は笑うともういいやって楽になりましたし、お笑いは神様からもらった人間のスゴイものじゃないでしょうか。笑ったらケンカが終わり、嫌な過去も嫌じゃなくなる。救いですよね。俺、カッコいいこと言ってる気がする!

実際自分にとっても救いで、会場で怒られることをして呼び出された時、笑いに変えてくれたスタッフさんに助けられました。笑いはすべてを救い、自分をも救ってくれるんですよね。

去年は「M-1グランプリ」の決勝まで行きましたが、俺がダメでした。ネタは面白くて内間は最高。俺が緊張したというか、びびってしまったんですよね。スリムクラブでは笑ってもらえない人たちが見ていると思い、負けモードで漫才してしまいました。予選で最高記録出して優勝するって言われていたのに、プレッシャーに包まれ自信を失くしてしまったかもしれません。今年はリベンジの年ですよ!

2017.1.8 収録

取材協力=よしもと沖縄花月

※2017年 8月10日(木)、「よしもと沖縄花月」リニューアルオープン!
お笑い公演はもちろん、地元パフォーマーやアーティストとのコラボレーション企画を開催する劇場として365日=毎日オープンします。場所は那覇市泊港の「とまりんアネックスビル2F」で、真栄田さん出演の「おきなわ新喜劇」開催予定もあり。
詳細は公式サイトにてご確認ください。

【よしもと沖縄花月】
www.yoshimoto.co.jp/okinawakagetsu/